静電気災害防止フレキシブルコンテナとは・・・
静電気災害防止フレキシブルコンテナとは、静電気による火災・爆発といった災害の危険性を無視できるほど小さくしたフレキシブルコンテナです。
(「JIS C 61340-4-4 特定応用のための標準的試験方法―フレキシブルコンテナの静電気的分類」が、2015年6月22日に改正されました。)
【概要項目】
1. 静電気災害防止フレキシブルコンテナの分類
2. 内袋の分類(構成、要求事項)
3. 静電気災害防止フレキシブルコンテナと内袋の組み合わせ
4. 静電気災害防止フレキシブルコンテナの用途
5. 危険区域及びゾーンの分類
1. 静電気災害防止フレキシブルコンテナの分類
静電気災害防止フレキシブルコンテナの分類は、表1の4タイプに分類されます。
(各タイプはフレキシブルコンテナの構造、用途の性質及び関連する性能要求によって定義されます。)
表1. 静電気災害防止フレキシブルコンテナの分類に関する原則
分 類 | 原 則 | 性能要求 |
タイプA | 静電気の蓄積に対して何ら対策をしない。 | ― |
タイプB | 火花放電及び沿面放電の発生を防止するように設計する。 | 絶縁破壊電圧試験で6kV以下で絶縁破壊する材料で構成する。 |
タイプC | 着火性の火花放電、ブラシ放電及び沿面放電の発生を防止出来るように設計する。 内容物の充填及び排出作業中に接地できるように設計する。 | 完全に相互接続された導電性糸又は、テープで構成している場合、接地可能接続点までの抵抗は、1.0×107Ω未満とする。 さらに、完全に相互接続された導電性糸又はテープ(ストライプ状20mm以下、格子状50mm以下の間隔)で構成する。 |
全体が導電性材料の場合の内面及び外面の両面、又は多層構造材料の場合、内面若しくは外面のいずれかの面は、接地可能接続点までの抵抗は、1.0×108Ω未満とする。 多層構造材料の内面が1.0×108Ω以上の場合、絶縁破壊電圧試験で6kV以下で絶縁破壊する材料で構成しなければならない。 | ||
タイプD | 着火性の火花放電、ブラシ放電及び沿面放電を防止できるように 設計する。 | 着火試験で着火を起こしてはならない |
内側が絶縁層をもつ材料で製造する場合、絶縁破壊電圧試験で6kV以下で絶縁破壊する材料で構成しなければならない。 |
2. 内袋の分類(構成、要求事項)
JIS C 61340-4-4:2015に新たな適用範囲として「内袋」が追加されました。
内袋の分類は表の3タイプ(タイプL1、タイプL2、タイプL3)に分類されます。
表2. タイプL1内袋が許容する構成及びその要求事項
構 成 | 性 能 | |||
内側の表面抵抗率(ρi) Ω | 外側の表面抵抗率(ρo) Ω | 絶縁破壊電圧(VB) kV | 厚さ(d) μm | |
1 | ρi≦1.0×107 | ρo≦1.0×107 | 測定不要 | 制限なし |
2A | ρi≦1.0×107 | ρo≦1.0×1012 | 測定不要 | 制限なし |
2B | ρi≦1.0×1012 | ρo≦1.0×107 | 測定不要 | 制限なし |
3 | ρi≦1.0×107 | ρo>1.0×1012 | VB<4 | 制限なし |
4 | ρi>1.0×1012 | ρo≦1.0×107 | VB<4 | d<700 |
表3. タイプL2内袋が許容する構成及びその要求事項
構 成 | 性 能 | |||
内側の表面抵抗率(ρi) Ω | 外側の表面抵抗率(ρo) Ω | 絶縁破壊電圧(VB) kV | 厚さ(d) μm | |
1 | 1.0×109≦ρi≦1.0×1012 | 1.0×109≦ρo≦1.0×1012 | 測定不要 | 制限なし |
2 | 1.0×109≦ρi≦1.0×1012 | ρo>1.0×1012 | VB<4 | 制限なし |
3 | ρi>1.0×1012 | 1.0×109≦ρo≦1.0×1012 | VB<4 | d<700 |
表4. タイプL3内袋が許容する構成及びその要求事項
構 成 | 性 能 | |||
内側の表面抵抗率(ρi) Ω | 外側の表面抵抗率(ρo) Ω | 絶縁破壊電圧(VB) kV | 厚さ(d) μm | |
1 | ρi>1.0×1012 | ρo>1.0×1012 | VB<4 | 制限なし |
3. 静電気災害防止フレキシブルコンテナと内袋の組み合わせ
安全に用いることができる静電気災害防止フレキシブルコンテナと内袋の組み合わせを表5に示します。
なお、フレキシブルコンテナ(静電気災害防止フレキシブルコンテナ)に内袋をいれても静電気災害防止フレキシブルコンテナの分類に変化はありません。
表5. 内袋と静電気災害防止フレキシブルコンテナ:危険な爆発雰囲気で使用可能及び使用不可能な組み合わせ
静電気災害防止 フレキシブルコンテナ | 内 袋 | ||
タイプL1 | タイプL2 | タイプL3 | |
タイプB | 使用不可 | 使用可 | 使用可 |
タイプC | 使用可a) | 使用可 | 使用不可 |
タイプD | 使用不可 | 使用可b) | 使用不可 |
注 a) 内袋が確実に接地されていることを保証するために、内袋の少なくとも1面から静電気災害防止フレキシブルコンテナの接地可能接続点までの抵抗は、JIS規格に従って測定したとき、組み合わせるタイプCの接地可能接続点までの抵抗以下で無ければならない。
b) 静電気災害防止フレキシブルコンテナと内袋の組合せはJIS規格に規定する要求事項に適合しなければならない。
追加注意
内袋のタイプに関係なく、タイプAは危険な爆発性雰囲気で用いてはならない。
危険な爆発性雰囲気において、排出後、空になった静電気災害防止フレキシブルコンテナから内袋を取り外してはならない。
4. 静電気災害防止フレキシブルコンテナの用途
静電気放電による着火能力は、放電の種類で異なります。
放電除去の必要性、並びにそのための静電気災害防止フレキシブルコンテナの要求事項及び仕様は静電気災害防止フレキシブルコンテナの用途に 依存します。
各タイプの静電気災害防止フレキシブルコンテナの用途条件を表6に示します。
表6. 各タイプの静電気災害防止フレキシブルコンテナの用途
静電気災害防止 フレキシブルコンテナ の内容物 | 周囲の条件 | ||
粉体の最小着火エネルギー (MIE)a) mJ | 不燃性雰囲気 | 粉じん危険区域ゾーン 21-22b2) (1000mJ≧MIE>3mJ)a) | ガス危険区域ゾーン1-2b2) (爆発グループⅡA及びⅡBに限る)b1) 又は 粉じん危険区域ゾーン21-22b2) (MIE≦3mJ) |
MIE>1000 | A,B,C,D | B,C,D | C,Dc) |
1000≧MIE>3 | B,C,D | B,C,D | C,Dc) |
MIE≦3d) | C,D | C,D | C,Dc) |
注記1 可燃性ガス又は上記の雰囲気がFIBCの内部に存在する場合(例えば、溶剤を含浸した粉体の場合)、通常、追加的な注意が必要になります。
注記2 MIE>1000mJの粉体は、不燃性雰囲気に含まれます。
注 a) IEC61241-2-3の規定に従って測定した値(インダクタンスを付加しない容量性放電)。
b1) 危険区域、爆発グループは表7による。
b2) ゾーンは表8による。
c) タイプDの使用は、爆発グループⅡA及びⅡBで、MIE≧0.14mJのものに限る。
d) 3mJの制限については、コーン放電と関連がある。(JIS C 61340-4-4:2015付属書E参照。)
5. 危険区域及びゾーンの分類
表7. 危険区域の分類
分 類 | 危険区域の詳細 | |
Ⅰ | 坑内爆発性ガスが生じる鉱山坑内 | |
Ⅱ | 鉱山坑内以外の場所で、次のものからなる爆発性ガス雰囲気が存在する場所 | |
A | 一般的な着火性をもつガス・蒸気(ヘキサン、メタン、アセトンなど) | |
B | 着火性の高いガス・蒸気(ジエチルエーテル、エチレン、シクロペンタンなど) | |
C | 着火性の極めて高いガス・蒸気(水素、アセチレン、二流化炭素など) | |
Ⅲ | 鉱山坑内以外の場所で、次のものからなる粉じん爆発雰囲気が存在する場所 | |
A | 可燃性浮遊物 | |
B | 非導電性粉じん | |
C | 導電性粉じん |
注記1 ある爆発グループに属する物質は、その爆発グループの危険区域を周辺に形成する。
注記2 着火危険性は、A,B,Cの順に増加する。
表8. ゾーンの分類
分 類 | ゾーンの詳細 |
0 | ガス、蒸気又はミストの状態の可燃性物質と空気との混合物からなる爆発性雰囲気が、連続的、長時間、又は頻繁に存在する場所 |
1 | ガス、蒸気又はミストの状態の可燃性物質と空気との混合物からなる爆発性雰囲気が、通常の操作において、ときどき発生する可能性のある場所 |
2 | ガス、蒸気又はミストの状態の可燃性物質と空気との混合物からなる爆発性雰囲気が、通常の操作において、発生する可能性はあるが、発生しても短時間である場所 |
20 | 可燃性粉じんが空気中に粉じん雲となって形成する爆発性雰囲気が、連続的、長時間、又は短時間だが頻繁に存在する場所 注記 大量の粉じんが存在するが、粉じん雲が連続的、長時間、又は頻繁に存在しない場所は、このゾーンに含まない。 |
21 | 可燃性粉じんが空気中に粉じん雲となって形成する爆発性雰囲気が、通常の作業において、ときどき発生する可能性のある場所 |
22 | 可燃性粉じんが空気中に粉じん雲となって形成する爆発性雰囲気が、通常の作業において、発生する可能性はあるが、発生しても短時間である場所 |
参考資料 IEC60079-10-1及びIEC60079-10-2に規定する危険区域、爆発グループ及びゾーン